カサリ

9/10

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「きゃあああぁぁぁっ!」  突然羽を広げた悪魔は、早苗に向かって飛んできた!  身の危険を感じた早苗は思わず、たたんだばかりの洗濯物に突っ伏した、悪魔はコンマ5秒前に早苗の頭があった位置を正確に通り過ぎてカーテンに留まった。 「殺虫剤、殺虫剤は?」  だが、今年に入ってから初の悪魔との戦いである、何の準備もしないまま悪魔の侵入を許してしまった。  二人だけの部屋に…。  突然スマホが鳴った、おそらく夫である和志からの着信だが、スマホは洗濯物に突っ伏している早苗の足元だ、カーテンに留まっているゴキブリから目を離すことなく、そろそろと体の向きを換える。  スマホを手に取ったとき、あろう事か切れてしまった。  慌てて、着信履歴から和志の電話番号を検索し通話ボタンを押す。 「あーもしもし?」  幸いにも直ぐに通話する事が出来た、妻が緊急事態に陥っているとはつゆほども思っていなかった夫は、間抜けな声で電話に出た。 「和志さん?!今何処?!」  夫の声を聞き、少し安堵の気持ちが出てきた早苗は、再び絶望感に襲われる…。  居ない?  さっきまでカーテンに留まっていた悪魔は、スマホの画面を確かめた隙に煙のように消えてしまった、だが早苗には分かっていた。 「…まだこの部屋にいる。」   
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加