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「きゃあああぁぁぁっ!」
突然羽を広げた悪魔は、早苗に向かって飛んできた!
身の危険を感じた早苗は思わず、たたんだばかりの洗濯物に突っ伏した、悪魔はコンマ5秒前に早苗の頭があった位置を正確に通り過ぎてカーテンに留まった。
「殺虫剤、殺虫剤は?」
だが、今年に入ってから初の悪魔との戦いである、何の準備もしないまま悪魔の侵入を許してしまった。
二人だけの部屋に…。
突然スマホが鳴った、おそらく夫である和志からの着信だが、スマホは洗濯物に突っ伏している早苗の足元だ、カーテンに留まっているゴキブリから目を離すことなく、そろそろと体の向きを換える。
スマホを手に取ったとき、あろう事か切れてしまった。
慌てて、着信履歴から和志の電話番号を検索し通話ボタンを押す。
「あーもしもし?」
幸いにも直ぐに通話する事が出来た、妻が緊急事態に陥っているとはつゆほども思っていなかった夫は、間抜けな声で電話に出た。
「和志さん?!今何処?!」
夫の声を聞き、少し安堵の気持ちが出てきた早苗は、再び絶望感に襲われる…。
居ない?
さっきまでカーテンに留まっていた悪魔は、スマホの画面を確かめた隙に煙のように消えてしまった、だが早苗には分かっていた。
「…まだこの部屋にいる。」
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