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「先日、王子様が読んでくださった絵本の中で。お姫様が、このようにして王子様に最初のキスを捧げていましたわ」
うっとりと、セリアは続ける。
「私も、同じように……初めて愛する方に、心からのキスを捧げることができるなんて。本当の本当に、夢のようでございます。謹んでお受けいたします、王子様」
「本当かい!?」
「勿論です。ああ、これが夢であったらどうしましょう……!こんな幸せなことが、私のような者に起きて本当に良いのでしょうか……!」
「いいんだよ、当たり前だろう!」
ああ、世界がバラ色に染まるような心地とはまさにこういうものだろうか。私は彼女を抱きしめて、勢い余ってそのまま二人して青絨毯に転がってしまった。きょとん、とした後弾かれたように笑い合う二人。守ってくれている兵士や従者達の動揺と困惑をひしひしと肌で感じつつも、私は幸せの絶頂にあった。
この子には、私が持ちうる最高の幸福を与えてみせよう。綺麗なドレスも、美味しい食べ物も、家族への支援も。何一つ不自由などさせたりしない。生まれてきて良かった、と必ず言わせてみせると心に誓う私である。
そう、だから教える必要はないのだ。
彼女を選んだ理由が、その青く美しい瞳にあることなど。
いずれ両目を病気と偽って摘出し、私のコレクションに加えるつもりであることなどは。
――そうだよ、身分も階級も関係ない。どんな身分の人であっても、その瞳が美しいことにはなんら変わりはないのだから!
何も心配しなくていい。綺麗に綺麗に洗って、並べてあげるのだ。
忠誠の証にと、自ら私に青い眼を差し出してくれた――パンサーの瞳の隣に。
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