迷子

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迷子

 男性は歩くのが早い。  父も例に漏れずそうだ。  遊園地でもフードコートでも、いつも余所見(よそみ)もせずに、目的地へと一直線に早足で歩いて行ってしまう。  だから、その後ろをついて歩く家族は、いつも置いてけぼりになっていた。  「またはぐれた」  様々なお店が立ち並ぶ、休日の大型ショッピングモール内。  母と私は目をスキップさせながら楽みつつ歩いていると、いつも通り父が迷子になってしまったらしい。  しかし、いつものことだ。慌てることはない。  別に父の顔を忘れたわけでもあるまいし、日頃からアップデートしている。  仕事が忙しくて毎日顔を合わせていないとしても、ちゃんと父だと認識できるのだ。  私は四方八方に目をやって、父の姿を探した。
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