椅子取りゲームの敗者

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椅子取りゲームの敗者

 僕は椅子取りゲームに勝ったことがない。いつも誰かに横取りされて、みなが楽しくやっているところを終わるまで教室の角で見ているのがお約束だった。そのたびに「次は勝てるよ」と慰めてくれた彼女は今、バージンロードを歩いている。一歩進むたびに真っ白なベールがふわりと揺れる。  みながそちらにカメラを向けるが、僕は彼女が行く先に目を向けた。白いタキシードに身を包んだ男が新婦を待っている。  僕はあそこにいたかった。そこから見る真っ白なドレスを着た彼女はきっと夢のように美しいのだろうと思うだけで、うっすら視界が滲んだ。  一歩一歩、新郎の方へ向かっていく。参列者たちは新婦が通ると一気にシャッターを切り出す。シャッター音が新婦を追いかけるように鳴り響く。  だけど、レンズ越しに見るのはもったいなくて、横顔をしっかりと見つめた。僕の真横を通り過ぎた一瞬、彼女はちらりとこちらを見たと思うと優しく微笑んだ。 『私、幸せになるね』  そんなことを言っているような気がした。僕は涙を我慢して無理やり笑い返すので精一杯だった。
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