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ライバル出現
言っているような気がした。僕は涙を我慢して無理やり笑い返すので精一杯だった。
僕は彼女――関一花を小さい頃から知っている。毎日外に遊びに行こうと誘いに来て、遊びに出たと思ったら木登りを始めたり、遊具から飛び降りたりするようなおてんば娘だった。一方僕は、何をするのにもびくびくしてしまうような少年だった。
だから、僕と彼女は仲良くなった。快活な彼女と内向的な僕でバランスがうまい具合に取れて、激しい喧嘩もないまま、高校も同じところに通った。
僕らの仲は友達ならみんな知っていた。隠しているわけでもなかったが、運よく同じクラスになり、同じ部活に入部したからあっという間に知られた。しかしその中には僕と彼女が恋人同士だという勘違いをしている人もいた――彼がそうだった。
永峰というその男子生徒は部活の仲間だった。スポーツ万能、いつも元気いっぱいで、男女問わず人気があった。そして、何の取り柄もない僕と仲良くしてくれる数少ない人物でもあった。同性の友達で一番仲の良いやつだった。
そんな彼がある日、急に改まって「ずっと気になっていることがあるんだけど」と切り出してきた。
「関とお前って、どんな関係なんだ?」
ああそれか、と思った。聞かれ慣れた質問だった。でも、こんな重いテンションで聞くのだから何かあると直感した。
それでも普通に「なんでもないよ」と答えればいいだけの話だった。 しかし、僕はできなかった。「どうしてそんなことを?」と聞くと、彼は少し照れ臭く笑った。元気溢れる笑顔がデフォルトの彼の始めて見せた顔だった。
「俺、関のことが好きなんだ」
と言った。
「一目惚れってやつなんだけど」
「……へえ」
頑張って笑おうと思った。でも頬は引きつって、気付けば視線を逸らしていた。
「まあ、お前だしな。告白してなくて付き合ってなくてもおかしくないけどさ、恋愛感情くらいあるんじゃないのか?」
さすが友達だった。
「お見通しなんだね」
「見てりゃ分かる。だからお前らが恋人なんじゃないかって噂も立つんだよ」
僕は一花が好きだった。縁があってずっと一緒にいられたせいで安心していたのだ。わざわざ告白して付き合わなくても、彼女のそばにずっといられた。彼女もそばにいてくれた。
だから、それはこの瞬間にも活きてくれるのではないかと期待した。
でも、そう上手くいくほど、人生は甘くなかった。
「じゃあ、ライバルってことになるんだな」
彼は僕の期待を普通に裏切った。
この瞬間、恐怖を感じた――この男に一花を取られてしまう。
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