彼女

1/1
前へ
/7ページ
次へ

彼女

 その言葉の意味を僕はすぐに知った。彼女と永峰がこのときすでに交際を始めていたのだ。試合終わりの部室で部員たちが話していたを聞いてしまったのだ。どうやら冬休みが始まってすぐのことだったらしい。本人たちは公言していなかったようだが、すでに周知の事実だった。  僕はとっくに負けていたのだ。    それから彼女たちがどうなったのかを僕は知らない。あえて情報をシャットダウンした。部にいる限りは少しくらい耳にすることもあったけど、全力で無視した。  僕は負けたのだから、邪魔をしてはいけない。 「私がいるからって理由で続けられる方が嫌かな」  彼女はきっと見抜いていたのだ。僕がずっと彼女に執着していたことを。ずっと僕に執着されていたことを――もしくは、恋心を。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加