第二十話:引っ越してきた人

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 国や市で管理しているわけではないため、どれほどのボロ屋であろうと勝手に取り壊しはできない。  そうなることで、町中で稀に見かけるどうして放置しているのかよくわからない廃墟が出来上がってしまうわけだ。  もちろん、他の理由で取り残されるパターンもあるのだろうが。 「でも、中にはもっと別の……非現実的な理由によって取り壊しができない建物というのもあるんですよね」  見越が話を続けてきた。 「ほら、怪談好きな方なら耳にしたことがあるでしょう? 建物を取り壊そうとした業者が、次々に事故を起こし死者が続出したとか、重機のトラブルが連続して作業ができなくなって諦めたとか。ああいうのはきっと、曰くつきの土地に手を出してしまったせいで祟られたのでしょうね」 「ああ、古い神社を壊したり、敷地内に祀られた祠を取り除いたら不幸が起きるようになったって話に類似しますね。昔何かを祀っていた跡地とかを利用して施設を建てようとしたら、作業員が何人も呪われたみたいなことも聞いたりします」
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