第二章

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 そう言って桧原さんが見上げた先は、一〇二号室の換気口。  一歩近づき確かめてみると、言われた通りそこから中の空気が出てきている感じはしない。 「外でこれだけ臭うんですから、中はもっとすごいことになってますよね。山内さん、何をしてるのかしら?」 「火事……とかだったら、もっと酷い状況になってないとおかしいですし、特に何かが燃えてるとかじゃないのかな? ひょっとして、昨夜は遅くまで焼き肉焼いて食べていたとか?」  そんなことくらいしか思い浮かばずに告げた俺の発言に、桧原さんは愛想笑いだけを返してくると、そっと右腕を前へ――ドアの横にあるインターホンへと伸ばした。 「こういうのって迷惑行為になることもありますし、一応は注意をした方が良いですよね?」  インターホンのギリギリで人差し指を止め、桧原さんは俺を見つめてくる。 「うーん……まぁ、それが一番適切かなとは思いますけど。でも、大丈夫かな。山内さんって、休みだと日中から酒飲んでることもあるらしいですし、万が一酔っぱらってたら絡んでくるかもしれませんよ?」
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