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「じゃあ次は私の番。私が弘晃を選んだのはね」
紫苑がふわりと笑う。
一一あれは、弘晃を好きだと気づく少し前。
「私、家でアイス食べてて」
「…うん?」
「美味しいなぁ、もう一個食べようかな、とか考えてて」
「…う、ん?」
「その時ね、この美味しさを弘晃にも伝えたい!って思ったの」
弘晃はきっと、俺にも一口頂戴、なんて言ってきて、子供のように無邪気に笑ってアイスを頬張ると思う。
一一それはほぼ無意識だった。
「面白い映画見たら弘晃にも教えたい!って思うし、いい曲見つけたら弘晃にも聞いてほしい!って思う」
弘晃は少し驚いたように紫苑の横顔を見つめる。
「本当に無意識にね、日常的に思い出してたの。楽しいこと共有したいなって、自然と顔が浮かんできちゃうんだよね」
「…何それ」
「あはは、私の理由弘晃よりしょうもないかも」
話の終着地点がわからなくなった紫苑は、誤魔化すように笑ってみせた。しかし弘晃は、ぎゅっと腕の力を強める。
「紫苑」
「ん?」
「好き。大好きだよ」
「えへへ、どうしたの」
「ほんとに大好き」
「ありがとう。私も好きだよ」
「やばい、俺まじで紫苑のこと好き」
「もー、わかったわかった」
「絶対紫苑が思ってる以上だから」
チュッ、と弘晃は軽く紫苑の頬に口付けた。紫苑はもう一度、という合図で今度は唇を向ける。
一一君を選んだ理由。それは不確かで、きっと一つじゃない。正解もない。
好き。その気持ちだけで十分だ。
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