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「え?何?」
「だから、何で俺を選んでくれたのかなって」
至って真面目な顔で繰り返す弘晃。
一一何でって言われても。
脳内で過去を探りながら、紫苑は端正な顔立ちを見つめる。
「聞きたいのは私の方だよ」
「俺?が紫苑を選んだ理由?」
「うん。気になる」
付き合ってもう少しで二年の記念日。あっという間に過ぎる毎日は、平穏で特別だった。
「おいで」
紫苑の小さな身体は弘晃の膝の間に綺麗に収まり、弘晃の長い腕が彼女をぎゅっと抱きしめる。二人の間を流れる空気感は、いつもより少し温かい。
「紫苑とは初対面の時からすごく話しやすかった」
「えー、そんな感じには見えなかったよ」
「知ってるでしょ、俺が人見知りだって」
「あはは、思い出すね」
「紫苑が笑ってるところ見て、あ、俺この人のこと好きなのかなって」
照れ屋な紫苑は、僅かに染まった頬を見られないよう俯いた。
一一耳、すぐ赤くなるなぁ。
弘晃は紫苑の肩に顎を乗せ、覗き込もうと意地悪をする。彼女の言動全てが愛おしい。
「それで紫苑が別の人に笑いかけてるの見て、あ、嫌だなって思った」
「…ふうん」
「紫苑は誰にでも平等に接する性格ってわかってても、急に焦ってきて。それで他の人に渡したくないないなって思った」
「なんか…、本題とズレてきてない?」
「えー、そうかな。好きが理由じゃダメなの?」
二人の距離がゼロになる。混じった空気がふわりと舞う。見つめ合う二人の間に言葉はなくても、手に取るように気持ちが分かる。
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