第Ⅱ部

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 なんと,リヨンの大型商業施設のほとんどが,トイレのマークを隠したり,取り替えたりして,安全対策を行ったのである。      * * * 『腕を組みました。どうすればマークをなくせるのか。とりあえずしっかりした紙に印字してみました。「Homme()」。そして ああでもないこうでもないと言いながら,トイレ看板に貼り付けました。 『一つ完成したので食品次長とハイタッチしました。店内全てのトイレマークを潰していくのは結構時間が掛かりました。やっとの思いでやり終え,次は「Femme()」だと意気込んでいると,のっそりと店長がやってきて,看板を見て言われました。「ノエル,すまないが英語でも書いてくれないか」。あんぐりと口を開けてしまいました。視覚記号が使えないというのは,思った以上に厄介でした』 ──ノエル・アジャーニ。「ラ・ルーパデュー」元総務次長。 『マークを変えていくうちに,私たちが社会的弱者のお客様に対して,どれだけ失礼なことをしていたのかと痛感しました。少なくとも私にとっては,自分の見方を変える良いきっかけになりました』 ──B・ボニツェール。リヨン商業開発。代表取締役。
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