第Ⅱ部

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『困ったのは,洗浄機能付トイレのボタンでした。トイレによってはボタンにピクトグラムが使われているものがあって,それは変えようがありませんでした。製造元のTOL(トール)に対応を求めましたが,問い合わせが殺到しているようで,一週間待たなければなりませんでした』 ──F・アビトボル。「コンフリュンアス」CEO。 『当時はスペイン・ショックのさなかであった。ピクトグラム廃止は,経営存続に不可欠な条件だったのだ。遅れをとるなら,安全を担保できなくなり,客足は遠のく。警備体制の強化だけでは,突発するデモを食い止めることはできない』 ──ベルベット・マスク。リュムール誌編集長。     * * *  リヨンの大型商業施設がピクトグラム対策を行ったことは,フィガロ紙でも肯定的に取り上げられた。大手新聞がこの出来事を詳しく扱ったので,我が国の商業界は,性差について真剣に,あるいは否応なく考え始めることになる。  ・NAREULT(ノルー)(自動車メーカー) 「ノルーは皆さまを新しい時代へとお連れします。新しい車と一緒に」という文章を7月から自身のホームページに記載。背景には,今まで異性向けすぎるとして購入を控えていた客層が,購入を検討するようになるのではないかとの見方が関係している。  ・Venvid(ヴェンビッド) Universal(ユニバーサル)(ゲームメーカー) 「ゲーム中のいかなる描画にも,差別的な意図は含まれておりません」という一文を,パッケージの下段に控えめに載せるようになる。背景には,当時人気ゲームであった「トイレでゴー」の印象を悪くしたくないとの見方が関係している。なお,このゲームには,130種類の様々なトイレのピクトグラムが出てくるが,それらが問題になることはなかった。
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