第Ⅱ部

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 この新作トイレ「Liberate(リベレイト)」(正式名称,シグマ型トイレット1310-A1)の発表は,明らかにトマト事件を意識したものであった。しかし疑問も残る。なぜ大手TOLがこんなに早く,自分たちの立場を鮮明にし,社会的性差に意見したのだろうか。  元TOL社員の一人はこう語る。      * * * 『新作を投入すると聞いた時,耳を疑いました。もう少し待つべきだと思いました。新作トイレは諸刃の剣。一部の人々の信用を得ることにもなれば,不安や憎悪を煽ることにもなるのです。TOLが先手を切った宣伝活動を行い,危険を冒す必要はどこにあったのでしょうか』 ──元TOL幹部。      * * *  専門家の中には,外的圧力を示唆する人もいる。      * * * 『もしあなたが,1,000万ユーロと引き換えに,新しい商品を宣伝するよう言われたならどうでしょうか。しかも,自社の売り上げがその後引き続き伸びていき,スペイン・ショックという大波を切り抜けることができます。人によって答えは変わってくるでしょう。そうです。変わってくるのです』 ──ジョージ・ボスト。社会学者。ナテンール大学。 『TOLに外的な圧力があったとすれば,それは大変な事実だ。その責任は,トイレ問題だけにとどまらない。スペイン・ショックによって失業者が増えているその時に,TOLが外因によって自身の経営方針を変えたのであれば,リストラされた者たちは何と言うだろうか』 ──ベルベット・マスク。リュムール誌編集長。      * * *  世界屈指の大企業TOLに外圧をかけるとは,一体何者なのか。そのような団体が本当に存在するのか。
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