第Ⅱ部

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 我々3人は,トイレの新作発表があってから,ロバート社長のもとへ挨拶に行った。ベレッタ氏が同氏とコネクションがあると言ったからである。自己紹介をし,握手を交わし,新作トイレや社長のアグレッシブな人柄を褒めた。  談笑後,ロバート社長は退室しようと歩みを進めた。その時だった。彼は何を思ったか(きびす)を返し,戻ってきてこう言った。      * * * 『何のことだかさっぱり分かりませんでした。さすがにそれはないと思いました』 ──ミシェル・ポアソン。新聞記者。ラ・ニュヴェレ新聞社。 『国内のトイレについて一番よく知っているのはTOLです。その社長がこう言ったのです。冗談とはとても思えませんでした』 ──私。新聞記者。ラ・ニュヴェレ新聞社。 『彼は近い将来を憂慮していたのでしょう。自由とは何か,人権とは何かを私たちに考えさせたかったのだと思います』 ──リリアン・ベレッタ。通信記者。BBF通信社。      * * *  社長ロバート・チェミレンは,確かに我々に言った。  「諸君,今後どんな事態になっても驚いてはいけない。自分をしっかり持ちたまえ。たとえ,この世からトイレがなくなるとしても──」
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