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事の全貌はこうである。時刻は12時15分。場所はショッピングモール・フォンティーヌA棟1階。生鮮食品ブースと衣料品ブースの間にあるトイレエリアであった。
男性清掃員マテュー・マリー・オジェ(Matthieu Marie Ogier,当時57)は,トイレの清掃をしていた。これに対し,ミスリス共和国出身のプログラマー,ララ・ドルカルテ(Lala Dolchorte,当時28)が暴言を吐き,カートに入れていたワインボトルを床で叩き割り,陳列されていたトマトを投げつけ,オジェを転倒させたのだ。投げたトマトの一部は空調設備に当たり,煙を発生させた。
ドルカルテはトマトを投げている最中に突然死。オジェは失神。後に彼はPTSD(Post Traumatic Stress Disorder 心的外傷後ストレス障害)を訴え,早々に職場を離れることになる。
2 「マーク」とは何か
こうして我々は,歴史研究者たちの間で『フォンティーヌ・トマト事件』として知られることになる,この重大な出来事を思い返すことができた。
とはいえ,腑に落ちない点があるはずだ。私も取材をしていて感じたのだが,加害者が発した「マーク」という言葉にはどんな意味があるのだろうか。この言葉は,小競り合いの原因であるはずだ。トマトを何度も投げつけた彼女の激怒の様を考えるに,事件そのものはたわいないものでも,事件の原因は,我々の想像を超えていると思えてならない。
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