第 Ⅲ 部

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2 地方自治体  2034年10月。  ラ・ニュヴェレ社。オフィスビル。  「なくなって,どうですか?」。ベレッタ氏はそう送ってきた。急いで打ったのか,主語がなかった。ミシェルが「何のこと?」と打ち返す。返信はすぐに来た。「ローヌ県(リヨンが含まれるエリア)がマークを撤廃したことについてです。人々はどのように感じていますか?」。  そう,地方自治体は対応に追われていたのである。そして地方が取ったある対策により,ジェンダー問題に次ぐ,2番目の社会問題が突如出現することになった。      * * * 『トイレット革命が始まってから,半年以上が経ちましたが,デモは収まる気配がありませんでした』 ──レーモン・ダンハウザー。元ローヌ県知事。 『恐怖は過ぎ去っていませんでした。マルセイユのサンシャルル駅では,その月に「予告状」が届いたのですが,それはデモに乗じてなされた過激活動の一部でした。「ピクトグラムを変更しなければ,駅内のトイレにトマトをぶち込んでやる」と脅されました』 ──ロザリー・K・アローロ。ブーシュ・デュ・ローヌ県知事。
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