第一話=最終話

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第一話=最終話

(きらら) だいち、今、どこ? (だいち) 俺はまだ学校の中やけど。 (きらら) へえ、やっぱりあんたもか。 なあ、前から一緒に行こうといっていたトコ、今日こそ、一緒に行かへん? (だいち) ああ、前から言いよったトコか。 そうやな、今日こそ行こか。 俺ら、まだ14才やし、ちょっと行くの早すぎるか思とったけど、もうそろそろええかなwww (きらら) 人が真面目に誘っとんのに、何、wwwつけとんねん(# ゚Д゚) でも、wwwつけなやっとられへんわな…… それに行くのが早すぎることはないと思うで。 このご時世、小学生でも行く奴は大勢おんねんやから。 (だいち) ごめんやて。 でも、俺、今、図書室におんねん。 すぐには動けんわ。 (きらら) へええ、図書室ってめずらしいなあ。 (だいち) そやろwww 他の場所やったら、センコーたちがおるかもしれんから、今日はは真面目腐った場所、選んだらしいわ。 つーか、今、指の数本しか動かんから、きららに返事打つの遅くなっとるけど、許してや。 (きらら) 指の数本しか動かんって、やっぱり、だいちもまたか…… うちは今、トイレの個室におるで。 さっき、上からホースで水ぶっかけられたけど、スマホだけは無事やったけん良かったわ。 (だいち) そうやったんか。 俺は図書室のロッカーの中やけど、あいつらはもう外にはおらんっぽいから、たぶんもうちょっと頑張れば自力で外に出れると思うわ。 きららは、そっから出れそうか? (きらら) うん。 うちもなんとか、自力で出れると思うわ。 それに、あの人ら、もう帰ったような気ィする。 ほんま、学校で人をいじり倒すだけ、いじり倒して、散々笑いまくって満足したら終わりやもんな。 (だいち) でも、そのいじりが毎日毎日続いたら、ほんとたまらんな。 今日だけ耐えればええんや、とずっとずっと続くんやもんな。 ずっとな。 (きらら) ほんまになあ。 ※※※ (だいち) きらら、俺はなんとかロッカーから出れたで。 きららはトイレから出れたか? (きらら) うーん、うちはもうちょっとかかりそうやわ。 待たせて悪いんやけど、先に待ち合わせ場所に行って、待っとってもらえるか? (だいち) 俺、やっぱ助けにいくわ。 どこの女子トイレや? (きらら) 助けにこんでええよ。 場所が場所やし。 もし、あいつらにあんたが女子トイレに入っとるとこ、見られでもしたら、もっと最悪なことになるで。 (だいち) かまんて。 俺らはもう明日の心配なんてせんでええやろwww (きらら) ほんとやなwww 言われたみたら、そうやわwww (だいち) きららもwww使っとるやないか( ´艸`) まあ、wwwでもつけな、よけい惨めになるだけやもんな。 で、今、きららはどこの女子トイレにおるんや? (きらら) 4階の南側のトイレや。 ちなみに3番目。 まあ、閉じ込められとるから、すぐに分かると思うけど。 なぜ、3番目なんかは、うちらの親世代が子供ン時に「トイレの花子さん」ゆう怪談が流行ったらしいわ。 その花子さんっていう幽霊が出てくるのが、3番目の個室らしいで。 今ンとこは、出てこんけど。 それに、もし出てきたら、うち、だいちだけでなく花子さんとも友達になりたいぐらいやわ。 (だいち) きらら、前から言おうと思っとたけど、こうして、きららと友達やなかったら、俺、もっと早くに例のトコに一人で行っとったかもしれんわ。 ありがとうな、ほんまに。 (きらら) お礼をいうのは、うちこそや。 こっちこそ、ありがとうな。 碌な人生やなかったけど、だいちに会えたことだけは、ほんまにうれしいわ。 今まで、うちらをあいつらから助けてもくれんかった神様にも大感謝や。 あ、そうや、だいち、今、ネクタイ持っとるか? 前、話した時、ネクタイいるなあって話しとったやろ。 (だいち) ちゃんと持っとる。 ただ、ちょっと埃まみれで破れとるけど。 (きらら) うちのネクタイは水浸しやから、お互い様や。 ちょっと冷たいかもしれんけど、しばらくの間やきん、我慢してや。 (だいち) もちろんやで。 あ、きらら、今、階段の窓から外が見えたけど、空が凄い色になっとるで。 単なる夕焼けやなくて、なんかピンクっぽい感じで……おかんの腹の中にいた時、こんな感じなんやろかみたいな空や。 (きらら) 何、ノスタルジーに思いを馳せとんねん。 ええから、早く助けに来てや。 うちもだいちと一緒に、お母さんのお腹の中みたいな空を見てみたいわ。 (だいち) もうすぐ、きららも見えるで。 今、俺、女子トイレの前に着いたから。 長いこと、待たせてすまんかったな。 ※※※  202×年9月×日。  市立◇◇中学校の屋上より、佐課田大地さん(14)と井具地きららさん(14)が飛び降り自殺をした。  屋上に残されていた彼らのスマートフォンに残されていた履歴ならび学内での聞き取り調査により、2人とも同級生からの執拗な虐めが原因による自殺とみられる。  佐課田さんの左手首と井具地さんの右手首、そして佐課田さんの左足首と井具地さんの右足首は、それぞれネクタイにて結ばれており、同時に屋上から飛び降りたと推測される。固く結ばれたネクタイは、地面への激突時の衝撃によっても外れはしなかったものだと思われる。
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