神様の人間嫌い

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 翌朝の月曜日、6時頃。早朝の澄んだ空気が夏の気配をはらんださわやかな風にかき混ぜられる頃、またしても一人、高校生くらいの少女が境内に足を踏み入れる。しかし昨日の子とは全く違って明るく快活な印象で、ショートカットの彼女は部活の朝練にでも行くのだろうか、まだひんやりした空気が残る中で、袖をまくったジャージ姿に通学かばんを持っている。  この少女も昨夜の彼女と同じく人工の滝には目もくれず賽銭箱まで歩いてくると、木と銅貨がぶつかる軽快な音とともに手を合わせた。 『どうか、あの人ともっと仲良くなれますように…』  短いお願い事を済ませて一礼すると、少女はたたっと小走りに神社を出て行った。 「若いのに朝早くから熱心なことだ。感心感心。しかし、昨夜も同じような願いを聞いたな。あの人、というのは…」  定位置であるお社の屋根の上で、神様は感心しながら願い事に流れる思念を感じ取る。神という存在は人の願い事を理解するために、心の中で唱えた言葉の奥にある意味を思念として感じ取ることができるのだ。そして神様は気付いた。 「…あの二人、想い人が同じじゃないか」
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