夜と朝、そして太陽

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夜と朝、そして太陽

 それから1週間、二人の少女は夜と朝、交互に毎日、滝見神楽神社にお願い事をしに来た。二人の願い事はいつも同じ、「あの人」と仲良くなること。 「結局、流行に乗ってとりあえず来て、皆が投げてるから滝にお金を投げ、SNSとやらに投稿するために写真を撮り、一通り満足すれば二度と訪れない。全く、人間とはどこまでも勝手で浅はかな生き物だ。その点、あの二人の少女はまあ、中々見どころがある」  日曜日の夜、時刻は23時。いつもと同じように夜にお参りに来たミヅキを見送った神様は、この1週間の人の動きを見てそんなことを思っていた。  神様が初めて願い事を聞いたときに、二人が同じ人を想っていることは分かっていたが、この1週間で思念を深く読み解いていくと断片的ではあるが大体の事情が掴めてきた。  まず、夜に来る少女がミヅキ、朝に来る少女がアカリ。そして「あの人」とは、タイヨウという男の子。3人は同じ高校に通う同級生で、アカリとタイヨウは同じクラスだが、ミヅキは違うようだ。ただミヅキはタイヨウといとこ同士の関係らしく、学校以外でも繋がりがある。また、ミヅキとアカリはどうやら知り合い同士ではなく、当然想い人が同じことも知らない。  何故二人が同じタイミングで急に、神社にお参りに訪れるようになったのかも神様は気になっていたが、彼の誕生日が1週間後に来ることが関係しているようだった。二人がその時に想いを伝えるかどうかは迷っている様子だが、おそらくプレゼントか何かを用意していて、お参りは関係の進展を期待しての願掛けのような意味なのだろう。  そしてもう一つ、3人には「音楽」という共通の繋がりがあった。二人からの情報を繋ぎ合わせると、タイヨウは趣味で作曲活動をしており、歌の協力者としてアカリ、演奏の協力者としてミヅキに、それぞれ相談をしているようだった。 「しかし、二人の想いが成就することはなさそうだ。残念だが…」  神様は、未来帳(みらいちょう)を開きながらため息をついた。未来帳とは、人間界で流れる大きな「運命」が記された書物。細かな事象は、人の行動によってその未来が変わるが、大きな「運命」は定められた通りに流れなければならない。 「タイヨウとやらは、3日後に交通事故で死んでしまう」
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