夜と朝、そして太陽

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 その日はあっさりとやってきた。  水曜日の朝、タイヨウは学校に来なかった。同じクラスのアカリは当然気付いていて、昼休みに体調を心配するメッセージをスマートフォンから送っていたが、返事はない。そして午後のホームルームの時間に、各クラスの担任から生徒に告げられる。 「2年B組の春日(かすが)太陽くんが、今朝通学途中に交通事故に遭って、お昼過ぎに亡くなりました」  昨日まで元気に登校していた彼のあまりに突然な訃報。動揺しながら周りの人と話し出す者、理解できずにぼんやりする者、ハンカチを目に当てて涙を堪える者。  ミヅキとアカリは、担任から告げられた内容を理解できず、それでも身体は激しい動悸と息苦しさを感じていた。ついこの前まで会話していた相手、週末の誕生日にプレゼントを用意していた相手、淡い想いを抱いていた相手。そんなことありえない。きっと何かの間違い。信じたく、ない。  二人はお互いのことを知らず、別々の空間にいながら、同じように想い人を突然失った悲しみを受け止めきれずにいた。  その日からの二人は、勉強にも部活にも身が入らず、食事をとることすら億劫(おっくう)に感じるほどショックを受けていた。特にミヅキは太陽の親族のため、学校を休んで葬儀やお通夜などにも参加するので嫌でも彼の死に向きあわなくてはならない。元々性格的に明るい方ではないミヅキは、家族に体調を心配されるほど落ち込んでいた。  それでも二人が思い出すのは、彼と一昨日電話で話した最後の言葉。 「俺はお前と、音楽を作りたい」  黒く湿った土から若い芽が顔を出すように、二人の沈んだ心にも一つの思いが芽生えていた。二人は告別式で会うであろう相手に、ある提案をすることを心に決める。
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