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「え…夜久さんも話を聞いたの、一昨日だったんですか」
「明莉でいいよ、同級生だし。うん、てことは美月も…?」
「うん…一昨日の夜、滅多に電話なんかしないのに、あの日は太陽からの着信が残ってて、かけ直したらその話になって」
美月はその日のことを思い出しながら、同時にあの夜は太陽からの電話に胸が躍ったことも思い出して、辛くなる。すると、今度は明莉が少し驚いた顔をしながらその時のことを話した。
「私もおんなじ、太陽からの着信があったからかけ直したら、その…あいつはかけてないって言い張ってたんだけど…あんなに言わなくてもいいじゃんね…じゃなくて、そのうち音楽の話になって。その時に、歌は私に、演奏はミヅキって奴がいるからお願いするんだって」
美月が電話をかけ直した時も、彼はおかしいな、と言っていた。何だか妙な偶然が気になるが、今は明莉に自分の決意を伝えなければならない。
美月は明莉の口ぶりから、もしかすると彼女も太陽のことが好きだったんじゃないか、と感じていた。恋敵になっていたかもしれない相手。しかもこんなに明るくてかわいい子は、明らかに強敵。だが今は、美月の唯一の理解者になってくれるかもしれない存在だった。
「あのっ」
美月は明莉の話を遮り気味に、自分の思いを彼女にぶつけた。
「彼の、太陽の音楽を、私たちで完成させませんか」
明莉は傘の奥に見える強いまなざしに一瞬驚いた顔を見せたが、美月の言葉を理解すると、とても優しい笑顔を作った。
「私も美月に、同じことを言いに来ました」
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