19人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
⑧-1
ふと気が付くと、6限目の授業が終わる5分前だった。
佐野から衝撃的なキスもどきと告白をされてから、頭の中は「?」がいっぱいで処理しきれない。
え?佐野が?あの佐野が?人気者の佐野が?
俺のこと?好き?好きって何?好きとは?
俺、地味ーズよ?モテ要素皆無だよ?
そもそも、佐野も俺も男ですしね。
ないない。
いやいや、そういう世界があるのも存じておりますけどね。
それなら、ありあり。
あれ?あれあれあれ?好きって何?
ココハドコ?ワタシハダレ?
授業を真面目に聞いていれば少しは頭の整理がつくかもしれないと、張り切って教科書とノートを開いてみたものの。
目論見は木っ端微塵に打ち砕かれて、俺のノートは真っ白に光り輝いていた。
…つうかこれ、1限目の英語じゃん。
勉学なめんな、俺。
すっかりポンコツに成り下がった俺は、全てを諦めて机に突っ伏す。
昨日の一件以来、佐野からのアクションは何もない。
フォローのひとつでもあれば、笑って誤魔化せるのに。
今日に限って視線を寄越さない佐野の方を、突っ伏した腕の隙間から恨めしく睨む。
キノコでも生えそうなくらいにどんよりしている俺とは正反対に、佐野の横顔は西陽に照らされてキラキラしていた。
眩しくて目を逸らすと同時に、6限目終了のチャイムが聞こえる。
俺の頭の中のモヤモヤも、黒板消しで綺麗に消せたらいいのに。
最初のコメントを投稿しよう!