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⑨-1
外はどんどん日が沈んで、夜の色がじわじわと空に染みていく頃。
俺は、蛍光灯がついた廊下をずんずんと足早に進んでいた。
司といた広場から、特別教室が入った特別棟を抜けて、教室棟に入る。
教室棟3階の端が俺たちの教室だ。
下校時間が過ぎたからか、電気がついてない教室がほとんどで、人の気配も少ない。
ぶっちゃけ、めちゃめちゃ怖いんですけど…
ペタペタと足音が廊下に響く。
明るいには明るいけれど、真っ直ぐに続く誰もいない廊下は、いつもより長く感じた。
呪文唱えたら、鞄がコッチに飛んできてくれたらいいのになぁ…
ワザとくだらないことを考えながら足を進めると、ようやく教室が見えてきた。
全員下校したのか、教室の電気はついていない。
早く電気をつけたくて、俺は教室の引き戸に駆け寄ると、ガラガラッと勢いよく戸を開けた。
しん、と静まり返った教室。
藍色の空と、黒く浮かび上がる机と椅子。
…と、なんだあれ?
窓際に真っ黒い塊が微動だにせず鎮座している。
誰だよ、教室にでっかい漬け物石もってきたの。
違う。あれは。
あれは…ヒト?
塊の正体が人だと気付いた俺は全身がゾッと総毛立つのを感じた。
叫び出したくても声が出ない。
なんだよアレ!どーすんのよオレ!
パニックになりそうな頭を必死で押さえ込んで、 何か助けになるものがないか周りを見渡す。
そうだ…電気!スイッチ!
塊を刺激しないように、震える手で蛍光灯のスイッチに手をかける。
襲ってきたら全速力で逃げよう。
今なら自己新記録達成するレベルで早く走れるぞ、俺!
小さく息を吐くと、スイッチに触れる指に力を入れた。
―パチッ
弾けるような音の後に、パッと教室中が明るくなる。
無意識に目をつぶっていた俺は、恐る恐る目を開けた。
窓際に突っ伏していたのは、昨日から俺の頭の中を占拠している、アイツだった。
「佐野…?」
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