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放課後。 ザワザワした教室には、ちょっとした勢力図ができる。 窓際で集まっている、男女のグループ、ザ・リア充。 いそいそと部活へ行く準備をしているヤローども。 数人で集まって楽しそうに話に花を咲かせている女子たち。 そして、俺みたいにソロ活を謳歌している、地味ーズ諸々。 孤独ほど、味わい深いものはない。 あ、五七五。季語はないけど。 カバンの中を整理する間に、チラッと目だけを動かして窓際のアイツを見る。 リア充グループの中心にいるのが、佐野だ。 イケメンでスポーツ万能、おまけに成績も トップクラス。 身長も高くて、誰とでも楽しそうに話す人気者だ。 月に何回かの当番の間に話すくらいだけれど、とても気さくなヤツだった。 天は一体何物をアイツに与えれば気が済むんだ。 俺にも3割くらい分けてくれ。 そんなアイツが、授業中に俺なんかに手を振って、一体何のメリットがあるんだろう。 あれか、俺が声掛けたら空き教室に連れ込まれて、モテるようになる壺でも売りつけられるヤツか。 買わねーけど。 冗談はさておき、佐野と俺との共通点といえば、同じ「図書委員」ということだけだ。 当番の間も、そこまで深く話す訳でもないしなぁ…。 ない頭を捻っても、答えは出てこない。 最後にチラッと佐野の方を見ると、バチッと視線が合って、ふと微笑まれた…ような気がした。 視線を振り払って、慌ててカバンを持って 教室を出る。 一瞬見えた、目を細めてはにかむような 笑顔に何故かドギマギする。 笑顔も可愛いじゃねーかよ、ちくしょう。
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