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次の日の昼休み。 チャイムが鳴って、周りがザワザワし出した頃、俺の顔にぬっと長身の影がかかる。 「陽太、飯いこう」 デカい身体に似合うデカい弁当箱を持って、 いつものように司が呼びに来た。 「あ、ちょっと待ってて」 ガタガタと机の上を片付けると、俺も弁当箱を持って立ち上がった。 基本的にソロ活動が多い俺を気にかけて、こうして昼になると隣のクラスから司が声をかけにきてくれる。 司サマサマだ。 天気のいい日は花壇のそばに座ってのんびり食べることもあるけれど、今日はオーソドックスに司の席で食べることになった。 前の席のヤツから椅子を借りると、司と向かい合って座る。 ガタガタとお互いの弁当を広げていると、 近くでわいわい盛り上がっている女子たちの声が耳に入ってきた。 「A組の梶さんっているじゃん」 「めっちゃ美人の子でしょ?いつも1人で いるけど」 「そうそう!その子、同じクラスの佐野くんと付き合ってるらしいよ」 「放課後、よく2人で仲良さそうに話してるところ見かけるよね」 えー!うそー!とか、きゃー!やばーい! なんて、甲高い黄色い声が女子グループから溢れた。 もはや何を言っているのか聞き取れないけれど、今日イチのテンションで盛り上がっているのは間違いない。 女子パワー、おそるべし。 すぐ脇できゃいきゃいしている声をものともせず、司はもぐもぐと特大の唐揚げを頬張っている。 ハムスターか。 ギチギチに詰め込まれたふりかけご飯を掻き込みながら、俺は思わぬ所で耳に入ったゴシップを反芻した。 …ん?いや…いやいやいや!ちょっと待て! 梶さんと佐野、付き合ってるの?! 梶さんといえば、黒髪ストレートボブが似合う、色白で目がぱっちりした人形みたいに 美人な女子だ。 他の女子のようにつるんだりはしないタイプのようで、いつも1人で静かに本を読んでいる。 その梶さんが、あのキラキラ笑顔無駄遣い 野郎と、付き合っている…だと…? あまりにタイプの違う意外な組み合わせに、俺はビックリする。 それと同時に、ふと違和感を覚えた。 ちょっと待てよ、梶さんの席って俺の左後ろだよな? …とすると、だ。 いつも授業中に、キラキラ笑顔で手を降っていたのって、もしかして… 「カノジョ」 の梶さん? ピタリと嵌るパズルのピース。 まさか…まさか…! 俺の自意識過剰ーーー!! 自分の自意識に恥ずかしいやら、情けない やらで猛烈に消えたくなる。 なんだそれ! 俺、めちゃめちゃ恥ずかしいヤツじゃん! つうか、俺を挟んでイチャイチャすんなよ! いきなりバチンと音を立てながら箸を置いて 両手で顔を覆った俺に、司はお茶を差し出しながら言った。 「お前のコーンコロッケ、貰っていい?」 持ってけ、ドロボウ!
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