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午後の授業。 相変わらず、周りのヤツらの魂は夢の中へと召されている。 反対に俺は、昼間のことが気になって全然寝られなかった。 おかげさまで、今までの授業は最後までバッチリ聞いていたし、ノートも抜かりなく取れた。 受験期でもそうそうになかった快挙である。 正直なところ、自分でもなんでこんなにモヤモヤしているのか分かっていない。 そもそも、クラスの美男美女がカップルになって、羨ましすぎて禿げそう…くらいの話じゃないか。 よくある話。あるある。 羨ましいのは分かるが、落ち着け、俺。 無限に湧き出るモヤモヤを削り取るように、筆圧強め(当社比3倍)でゴリゴリとノートを取っていく。 途中で力の入り方が片寄ったからか、パキッと小気味よい音を立ててシャーペンの芯が折れた。 替芯、あったかな… ごそごそと筆箱の中身を漁っていると、ふと俺の左側、つまり窓際の方から視線を感じた。 …佐野だ チラと目だけを上げて、そちらを見る。 佐野は相変わらずにこやかにこちらを見ていた。 今日もキラキラスマイル全開かよ、ちくしょう 俺の視線が合ったからか、はたまたタイミングが重なったからか、いつものようにひらひらと手を振ってくる。 やれやれ、またかよ… …と、リアクションを取ろうと思って、やめた。 これは、梶さんへのアピールだ。 佐野の視界に俺はいない。 俺を通り越して、梶さんへ手を振っているのだ。 俺じゃ、ない。 小さく手を振り続けている佐野から視線を外す。 そうだ、俺はシャーペンの替芯を探さなきゃいけないんだった。 目の前の筆箱から替芯のパッケージを探すことに集中する。 こんな時に限って、替芯はなかなか見つからなかった。 佐野が今どんな顔をしているのか、俺には分からない。 間の自意識過剰ヤローに邪魔されることなく、梶さんと愛の交流を深めているのかもしれない。 ―もし、あの笑顔が俺に向けられていたら、俺はどうしていたんだろう ようやく見つけたパッケージからシャーペンの芯を出して補充する。 ―あの笑顔の先が、梶さんじゃなくて俺だったら、俺はどう思うんだろう カチカチと新しい芯を出して、遅れていた部分のノートを取り始めた。 ゴリゴリとノートを取りながら俺は、心の隅でぐちゃぐちゃに丸まった何かに気付かないフリをした。
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