第二章 穏やかなる海は与えられないのは当然なりや

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一体、何なのだこの男は…… 全来秋は中食が終わると同時に心の疲れで床に伏せる達者大師の元に駆けて行った。 「大師! お休みのところ申し訳ありませんが、あの陰陽師のことで少々お話の方を」 「あの男が何かをしたのか?」 「え…… あ…… 何かをしたと言うわけではありませんが…… 禅をすれば全くの無! 中食に関しても音も何もせずに無が食らう姿そのもの! あれはまるで……」 「我らが禅の中で求め行く御仏や神か何かだと言いたいのか?」 「ええ…… ですがそんな訳は! 禅の中で一度も語りかけても下さらない御仏が、急に顕現なさるなど!」 「彼は人だよ、おそらくは神に近い、いや、心は神そのものかもしれんな」 「拙僧は…… 本堂にある仏像と同じように彼の目の前で手を合わせ膝を折り祈りそうになってしまいました!」 「うむ…… それに気がつけるだけお主も立派に修行をしとるということが分かって嬉しいぐらいだ。夜座の前に私の元に来るように伝えておきなさい。私もこれぐらい経てば流石に落ち着くだろう」 「はい……」
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