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第1話 新しい家族はエビフライ
「ただいまーっ」
喋るエビフライのエビちゃんと共に、無事に家へと戻って来た私。
「おねーちゃん遅かったじゃない!」
「心配したのよ?」
「さあ、夜ももう遅い。お風呂に入って寝なさい」
「みんな、心配かけてごめん。実はその…」
家族に紹介すると意気込んでいたものの、いざ本人たちを目の前にすると、中々緊張するものである。
「お姉ちゃん!肩の上…さっきのエビフライが乗ってるよ?」
「あらやだ、本当だわ。食卓から逃げ出したエビフライを捕まえてきたの?」
「きっともう冷めてるし、外に落ちていたのなら不衛生だから、食べるのはやめておきなさい」
自分から言い出そうと思っていたら、家族の方が先にエビちゃんの存在に気付いて突っ込んできた。
「みんなっ!聞いてほしいの」
深呼吸してから、勇気を出して大きな声で話を切り出すと、3人とも静かになって私の顔を見ながら聞く姿勢になってくれた。
「今から、このエビフライを…エビちゃんを、家族の一員として迎えたいのっ!」
言えた。でも、家族たちからはしばらく何も返事がなかった。きょとんとして、ただ私の話に耳を傾けている。
「よ…よろしく、お願いします」
すると、私の肩の上からエビちゃんが、微かに聞き取れるかどうかというくらいの高く小さな声で、パパとママと妹に向かって挨拶をした。
「しゃ…」
フライング気味に声を出して一旦沈黙するママ。
「しゃべったぁぁ!!!」
その後、3人揃って大声を出し、エビちゃんが動くだけでなく喋ることに仰天してしまった。
「みんな…どうかな?」
エビちゃんの挨拶に続けて、遠慮気味に家族へ問う私。
「べ、別に…」
「いいんじゃないのかな?」
「生きたエビフライが家族だなんて…そんな人生、とっても面白そうじゃない!」
「み、みんな…」
3人とも案外あっさりと受け入れてくれたので、思わず私は涙が出てきた。
こうして、エビちゃんは正式に我が家の一員となったのでした。
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