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第3話 エビフライはどんな夢見る?
エビちゃんが寝入ってから、私は棚の中を探してあるものを見つけた。
「お裁縫セットぉ〜」
深夜のテンションのせいで、誰も聞いていないのに某ネコ型ロボットのような口調でボケてみる私。
「私、何やってんだろ…恥ずかしい〜」
さて、小学校で使っていた裁縫セットを出してきたのは、エビちゃんの布団及び服を作るためだ。
今は飽きてしまったけれど、以前パッチワークにハマっていた時期があったから、その時に使っていた布生地たちがまだ残っている。
そんなに多くはないけれど、エビちゃんのサイズに合わせて布団や服を作るには十分だ。
「さて、始めるぞ〜」
ブランクがあるとは言え、パッチワークの現役時代はたくさんの作品を縫ってきた。だから、考えなくても手が勝手に動くくらいには、当時の感覚が残っていた。
サイズなどはメジャーを使わずとも目分量で合わせられるが、これも経験に裏付けられた技能だ。
作業が波に乗ってきて、横目でエビちゃんを見ると、ふとあることが気になった。
「エビフライでも、夢を見るのかな?」
人間の生活に広く馴染んでいる犬ですら、未だに「夢を見るのかどうか?」が解明されていない。
エビちゃんは、人語を喋るし知能も犬よりは人間に近そうだ。
だったら夢を見ていてもおかしくないんじゃないだろうか?
「もし、ここに脳波測定装置があったらなぁ〜」
裁縫をするのが余裕綽々過ぎて、ついつい妄想が捗ってしまう。
ふと時計を見やると、もう夜中の3時だった。
「たっ、たいへんだぁ!明日学校なのに…」
余計なことを考えるのはやめて、私は作業に集中した。本気を出せば完成まで20分もかからない。
「できたっ!」
久々に裁縫をした楽しさ、完成品をエビちゃんが使ってくれることへのワクワク感に満たされ、そしていろいろあった一日の疲労感から、裁縫道具も片付けぬままベッドに倒れ込んだ。
「はぁ…やりきった。でも、何だか興奮して寝れないなぁ」
眠たいはずなのに、妙に脳が冴えて眠ることができない。そして、先程考えていたことが再び頭に浮かんでくる。
そういえば、犬が夢を見ているのかわからないのはなぜだろう?
勿論脳波の測定が難しかったり、睡眠のメカニズムそのものに不明な点が多かったりするからという理由もあるけれど…
謎の解明を妨げている最大の要因は、犬が喋れないということだ。
「エビちゃんは喋れるじゃない!だったら、明日の朝起きてから聞けばいいか」
そのことに気がついた時、モヤモヤが消し飛んでスッキリとした感覚だった。
「ふあ〜あ」
大きなあくびが出て、そのまま私は眠りについたのだった。
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