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第4話 エビフライは何食べる?
『朝ニナッタヨ!朝ニナッタヨ!』
"コッコちゃん"の目覚まし時計が鳴り響く…もう朝だ!
私はベッドから飛び起きて、パジャマを着替えて学校へ行く支度を始めた。
昨夜片付けていなかった勉強道具類を鞄に入れようと机に目をやると、そこにはキッチンペーパーの上に寝転がるエビフライの姿があった。
「ゆ、夢じゃない⁉︎」
昨晩の不思議な出会いは、全て夢ではなく現実だったのだ。
「朝ごはんよ〜」
一階からママの呼ぶ声が聞こえる。
私はエビちゃんと共に食卓へと向かった。
「おはよう、お姉ちゃん。おはよう、エビちゃん」
「お、おはよう」
妹から挨拶され、エビちゃんは照れた様子で返事をした。
「エビちゃん、ちゃんと挨拶を返せて偉いわねぇ」
感心するママ。と言うか、挨拶を返したくらいでこんなに褒められるなんて、人間だったら幼い子どもくらいじゃないか?
家族の中で、エビちゃんは一体どういう認識なのだろうか…子ども?小学生くらい?赤ちゃん?
エビちゃんの精神年齢が、人間に換算するといくつくらいなのか…など、考え出すとキリがない。
「昨日は夜更かししたのね。これ食べてシャキッとしなさい!」
ママは私の顔を見て寝不足なのを感じ取り、トーストの上の目玉焼きを2つにしてくれていた。
「いっただきまーす!」
私はそれを口いっぱいに頬張り、幸せな気分に浸る。
「おいしい?」
すると、エビちゃんが私に朝食の感想を尋ねてきた。
「うん、すっごく美味しいよ!エビちゃんもどう?……」
あれ?エビフライが食パンを食べるなんて聞いたことがないな。そもそもエビフライって何を食べるんだ?
「ごめん、エビちゃんはパン食べれないか」
「油…」
「油…?」
「そうか、エビちゃんもお腹が空いてるんだね。はい、サラダ油」
ニッコリ微笑みながら、ママが小さな器にサラダ油を注いでエビちゃんに差し出した。
「ありがとう、ママ!」
エビちゃんはそう言って私の方から食卓に飛び移ると、器に入った油を飲み干した。
「お腹いっぱい!」
満足そうにしているエビちゃん。
「あれ?制服の肩、汚れているわよ」
「あっ!しまった…」
ママが、私の学生服の右肩に油染みがついてしまっているのを発見した。パジャマに続いて2度目の失敗だ…
対策として、昨夜エビフライ用の服を作ったのに、そのことをすっかり忘れていた。
「エビちゃん!あなたにプレゼントがあるのっ」
私はエビちゃんの尻尾を持って部屋まで連
れて行った。
「これ、見て!」
「す、すごい!」
私はエビちゃんに、専用の衣服を披露した。
「これ、すごく似合うと思うの。洗濯用に、3着用意したわ。好きなのを着てみて」
「ありがとうっ!それじゃあ、この花柄の服がいい」
手足がないため、エビちゃんは自分で衣服を着れない。
私が手を油まみれにしながらも、エビちゃんの尻尾を服の奥に押し込んで、漸く着ることができた。
「次作るときは、ボタンを留めるタイプにしよう…」
そして、着衣した姿を手鏡に写してあげると、エビちゃんはとっても喜んだ。
そして、ピョンピョンと勉強机の上を跳ね回った。それでも、衣服がしっかりと油分を吸い取って、家具に油が付着するのをガードすることができている。
「大成功っ!」
私はガッツポーズをして喜んだ。
「あともう一つ…」
そして、私は手製のベッドもエビちゃんに見せた。
「あなたの布団は、今日からこれを使ってね」
「服だけじゃなくて、布団まで!ありがとう。うっうっ…」
エビちゃんは嬉しさのあまり、涙…ではなく油を流しながら泣いていた。
「さて、そろそろ学校に行く時間だわ。行ってくるね…」
あれ?エビちゃんは、私が学校に行っている間、どこで何をして過ごしていればいいんだろう?
また新しい疑問が浮かび上がってきたなだった。
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