1. 酔った帰りに月の精引っ掛けちゃいました

1/11
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ

1. 酔った帰りに月の精引っ掛けちゃいました

 酒は人を繋ぐというもので。  私が彼と知り合ったのは花見の会の帰りだった。  桜が咲く大きな公園で仲間と楽しく飲み会をし、楽しく別れて駅から家まで帰る途中、近所の公園にも桜が咲いていることを思い出した。酔って浮かれた状態で、どうせなら一人花見も決行しようと思い付き、コンビニでビールを買う。一本、いや二本いっちゃう? 飲まなければ家に持って帰ればいいんだものね。  で、ビール二本にチーカマ買って、公園に行ったら、彼がいた。  Tシャツにカーディガン、ジョガーパンツ。足元はサンダル。気の抜けたコーディネートで、近所に住んでいるお兄さん感満載。それにも関わらず目に止まったのは、ひとえに彼の美しさ故だった。  ベンチに座っている状態だけれど、スタイルの良さがひと目で分かる。綺麗な姿勢。地味服なのに、モデルの撮影と疑うくらいにキマっている。長い髪を無造作に一つに束ね、手には見たことのない謎な楽器。顔は俯いてなおかつメガネ掛けているのでよく見えないけれど、あれは絶対に美人だ。明かに男の人だけど、美人としか言いようが無い。え? 芸能人かなんかなの? すっごい眼福なんだけど。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!