5. 月の世界で、杯を傾けよう

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「……こうして暗月とまた会えて、二人でお酒飲んでいることが。夢じゃないよね、これ?」  言いながらぞっとした。これで目が覚めたら一人でした、なんてオチ、想像したら怖すぎる。 「夢にしてくれるな」  ため息混じりの声とともに、肩を抱かれた。その力強さに彼の本気を感じ、嬉しさと共に戸惑いも生じる。 「やっぱり、不思議」 「なにが?」 「私はただの人間で、突出したところも特に無いのに、なんで暗月が私を思ってくれるのかが、不思議」  言いながら、あれ? って思った。  これ、結局は私のどこが好き? って遠回しに聞いているのと同じじゃ無い? 「あー、いや良いです! 今の無し!」  恥ずかしさに慌てて離れようともがいたら、より一層ぎゅっと抱きしめられた。 「お前を認識したのは二年前だよ」 「二年前?」  その年数に、またびくりとする。 「辛いと、寂しいと悲鳴をあげる声が聴こえたので下界を見たら、笑っているお前がいた。悲しい時にも人は笑う。それが常々疑問だった。だからお前を観察することにしたのが、始まりだ」 「観察……」  なんか思ったより甘く無い。そして二年も観察されていたのか。思わず力が抜けて、抵抗する気が失せた。
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