5. 月の世界で、杯を傾けよう

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「それはまあ。お前と結びつきの強い者は、何かの拍子にお前のことが思い浮かぶだろう。決してはっきりとは思い出さなくとも」  いきなり事務的に質問を始めた私に戸惑いつつ、暗月が答える。 「もし出来たらなんだけど、私に三ヶ月猶予をくれる? 海外赴任の決まった彼氏と結婚するんで、寿退社します! って設定で、みんなとお別れしたい。友達ともそうやって会えないことにしてからみんなの記憶を消した方が、何かの拍子で浮かんでも、確かそういう子いたよね、程度で終わるんじゃ無いかな?」 「それは、良いが……」  本当に良いのか? と言わんばかりの暗月に向かって、私は微笑んだ。 「私の決意を舐めてもらっては、困ります。生身の男じゃなく、ファンタジー世界の男を選んだ時点で、色々と覚悟はしているんだから」  覚悟の中には、生きているうちに結局暗月には会えませんでした。ってのもあって、それと死後に失った家族に逢えるのとどっちが良いのか、そんなことを考えていた。  そして結局、私は暗月と共に生きることに決めたんだ。多分家族も許してくれるはず。私の、家族だもの。
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