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「お前の言うファンタジー世界がどんなものかは知らないが、ここで一生を暮らすことが全て輝かしいわけでは無い」
珍しく弱気な発言を繰り返す暗月が、なんだか可愛く思えてきた。こんな美人さんな月の精を可愛いと思えるのだから、愛おしいって気持ちは最強だ。
「暗月」
あらためて、私は彼と向き合って、真っ直ぐ目を合わせた。
「私をお嫁さんにして下さい。あなたを愛しているんです」
どうだ。って感じで言ってみた。暗月の目が見開いて、なんだか動かず固まっている。いわゆるあれだ。呆気に取られた顔だ。だから駄目押しで言ってみた。
「お願い」
その瞬間、もの凄い勢いで抱きしめられ、唇が合わさった。勢いで歯が当たりそうになるギリギリのところで減速して、何度も角度を変えて口付けされる。
「朔」
あれ? もう終わり?
始まったのと同じくらいの唐突さで唇が離れた。つい目で唇を追ったら呼び掛けられたので、慌てて暗月を見返す。
「もう離さない」
そう言う瞳が鋭すぎて、ぞくりとした。腰のあたりに熱がたまる。
「うん。離さないで」
素直な気持ちで言い返したら、暗月の口角が上がった。
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