疑って損をした

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「しんちゃん、それが違うねん・・」 『かまへん、かまへんがな! 遠慮なんかせんでええ、幼馴染の中やないか!お互い云いたいことが言える間柄やろ⁉』 「違うねんて⁉ 実はな、ヒフミからの催促が嫌で、番号を変えたんや・・ 相手は佐川という男やけどな、それがメッチャ怖いんや・・うちの嫁さんとエエ勝負や!」 『電話で恫喝か?・・そら怖かったやろ⁉・・それで・・警察は、どない云うとった⁉』 「エミ、お茶、未だか?」  キッチンを盾に、しゃがみ込んでしまったエミ、その両の手に握られた拳は、まるで床に食い込むかのようだった。 そして、何やら心の中で叫んでいた。   『もっと早よ来いや‼』  そもそも裁判所からの郵便物が届いたときに、気づくべきである。 本来、裁判所からのこの種の郵便物は、特別送達であり、受取人の受領印を必要とし、直接ポストに入れることなど無い。  封筒に印刷されている裁判所と思わせる電話番号も詐欺グループの番号である。 また、仮差し押さえの通知書と、ヒフミ商事とをリンクさせたのは、哲也とエミの妄想である。  柵(しがらみ)で保証人を引き受けたことで、哲也は徐々に緒方慎一を遠ざけるようになった。 だから電話して確かめることすら出来ない、そんなところまで、詐欺群団は想定していたとすれば、恐ろしい存在と言えるだろう。  さらに、人の弁済金ともなると一度は800万円を提示されることで、100万円の支払いなら容易だと錯覚してしまうから、人の心理というのは、不思議なものである。 【終わり】 尚、これはフィクションであり、登場する人物・団体の名称は全て仮称いたします。
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