4人が本棚に入れています
本棚に追加
「しんちゃん、それが違うねん・・」
『かまへん、かまへんがな! 遠慮なんかせんでええ、幼馴染の中やないか!お互い云いたいことが言える間柄やろ⁉』
「違うねんて⁉ 実はな、ヒフミからの催促が嫌で、番号を変えたんや・・
相手は佐川という男やけどな、それがメッチャ怖いんや・・うちの嫁さんとエエ勝負や!」
『電話で恫喝か?・・そら怖かったやろ⁉・・それで・・警察は、どない云うとった⁉』
「エミ、お茶、未だか?」
キッチンを盾に、しゃがみ込んでしまったエミ、その両の手に握られた拳は、まるで床に食い込むかのようだった。
そして、何やら心の中で叫んでいた。
『もっと早よ来いや‼』
そもそも裁判所からの郵便物が届いたときに、気づくべきである。
本来、裁判所からのこの種の郵便物は、特別送達であり、受取人の受領印を必要とし、直接ポストに入れることなど無い。
封筒に印刷されている裁判所と思わせる電話番号も詐欺グループの番号である。
また、仮差し押さえの通知書と、ヒフミ商事とをリンクさせたのは、哲也とエミの妄想である。
柵(しがらみ)で保証人を引き受けたことで、哲也は徐々に緒方慎一を遠ざけるようになった。
だから電話して確かめることすら出来ない、そんなところまで、詐欺群団は想定していたとすれば、恐ろしい存在と言えるだろう。
さらに、人の弁済金ともなると一度は800万円を提示されることで、100万円の支払いなら容易だと錯覚してしまうから、人の心理というのは、不思議なものである。
【終わり】
尚、これはフィクションであり、登場する人物・団体の名称は全て仮称いたします。
最初のコメントを投稿しよう!