疑って損をした

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「分かりません・・こんな文言が書いたった事も知らんかったですね」 『この部分を明らかにするためにも、係争するつもりで、専門の弁護士を立てた方が良いと思いますがね・・何でしたらご紹介しましょうか?』     ヒフミからの請求書が届いたあの日、幼馴染に「裏切られた」と妄想を抱いた哲也は、その緒方に確認のための電話をすることに躊躇した。  もし電話をして、幼馴染から再び窮状を訴えらたと想定するならば、それは哲也には耐えられなかったのかも知れない。 「係争ですか? そういう事ですよね・・分かりました。今日は、貴重なお時間頂きまして有難うございました・・係争の件、一度、家内に相談してみます」  法律相談所での話は、哲也が期待していたものとは、ほど遠い結果に終わった。   「そうか、全ての債務か・・あの頃は債務や債権、特に代位弁済やなんて・・その言葉が何の意味やらさっぱり分からんのに、判子押しとったんやな・・アホやな! ホンマに俺はアホな男や思うわ・・いまも、係争という言葉、分からんのに、分かった振りしてしもて・・これではアカンわな・・」    これまでの哲也は、「正義は勝つ!」ズルさえしなければ、それも公の場で戦えるならば、必ず自分の正しさが証明される、と思い込んでいた。  しかしこの度、世間では「誠実そうな口約束よりも、書いたもの」が優先されることを知った。  それが証拠に、今の自分は裁判所からの一通の仮差しの通知書に、右往左往のありさまだ。 それも正義がよりどころとする裁判所が差出人というから、哲也の心の傷は察するにあまりある。 やがて、ヒフミ商事に対する哲也の闘争本能など、失せてしまっていた。
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