天使と悪魔

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「それ、貸してみ!」  黒い男は、タブレットをスクロールする。 「ほら、これこれ!」  黒い男は、画面を見せる。 「何ですか?」 「ご存知ない?」 「まだ新人なもんで」 「これ『職業的大罪』の項目。いろんな職業特有の、やらかしたら地獄行きになるようなこと」 「例えば?」 「ミサイルの誤射とか、フグ(さし)で皆殺しとか・・・」  ん?そんな大それたこと、身に覚えはないが? 「たしかに[✔︎]ありますね。彼、は何のご職業で?」  ご存命中って言い方はやめてほしい。  黒い男は、タブレットで私の個人情報を見せる。 「ほら、は作家だったんだよ」  だから、まだ故人って言わないでくれ。  白い男が尋ねる。 「作家さんの大罪って、いったい何ですか?」 「ここに書いてある。『作家の大罪は、退屈なものを書くこと』・・・だって」 (注 オーストラリアのベストセラー作家、ポール・ジェニングスの言葉)  白い男が言う。 「そんな!小説がつまんないくらいで、せっかくの貴重な魂を渡せませんよ!」  まさか、魂が天使と悪魔の取り合いになるとは、は思いもよらなかった・・・いやいや、生前じゃないって!
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