2度目の春

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「んっ」 舌が、口腔内を這う。 歯列、頬の内側——あらゆるところをなぞると、今度は口のまわりをべろべろと舐められた。 「ちょっ……犬じゃないんだから」 唾液で濡れた唇を拳で拭うと、ぎらついた音の目がすぐそばにあった。 勢いよく、パンツを下着ごと引き剥がされてしまう。 そして、またキスをするのかと思いきや——彼の唇は——大智の最も熱い部分にふれた。 「あ……っ」 恥ずかしいという感情が突き上げたのも一瞬で、すぐ快楽に上書きされてしまう。 唾液の音が響く、噛みつくような愛撫だった。 「待って……いっちゃう……」 後頭部を掴むと、音は唇を離してにやりと笑った。 それから、やや後退する。 足を折り畳まれ、次はまた違うところに舌が滑り込んできて——体が跳ねた。 「あぁ……っ」 ふたたび、犬のように舐め回される。 舌の温かい感触に混ざって指が侵入してきた時、反射神経のように高い声が出た。 「あー……、あっ!」 大智の体が柔らかく、くたくたに煮詰められると、音は迷いなく、指先を快楽めがけて滑り込ませてきた。 こちらのいいところは、すべて知り尽くしている。 むしろ、大智自身も知らなかった新たな快楽への道筋を拓いたのは——ほかでもない彼だった。 「だめっ、そこ……っ! やっ」 「だめなの?」 意地悪く言われて、指を引き抜かれてしまった。 絶頂の波が引き、大智は首を慌てて左右に振った。 「だめじゃない……」 「じゃあどうしてほしいの?」 音はニタニタと笑っていて、腕をさすって催促しても反応しない。 焦ったくなり、今度は彼を押し倒した。 そのまままたがると、音は微かに躊躇して見せたが、大智はそのまま——腰を沈めた。 「チー、待って……ゴム……」   彼の躊躇が、快楽に包まれてすぼんでいく。 大智は小刻みに息を吐きながら、腰を下ろすと、そのまま動かずに呼吸を整えた。 彼と繋がった瞬間は、今でも苦痛がないといえば嘘になる。 しかし、みっちりと体内を満たす彼が、自分の体に馴染んで溶けていくようなこの感覚が——好きだ。 違和感がなくなり、苦痛が悦びに塗り替えられていく、この感じも。
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