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その放課後、太一は一人体育館に残り発声の練習をする。太一の将来の夢は俳優。何度もオーディションに参加しているが、今は全敗。その度に審査員にキツいことを言われてきた。諦めろや才能がないと散々に言われてきた。小学校の仲間たちは、皆知っている。太一は毎日努力を重ねているが、上がり症の性格のため失敗ばかりしていることを。
「あー!あー!あー!」
一人体育館で発声の練習をしていると愛が体育館に現れる。太一は咄嗟に発声をやめる。
「なんでやめちゃうの?練習でしょ?」
「でも……」
「でもじゃないの!恥ずかしがってどうするのさ!毎日毎日頑張ってるのに、そんなことでやめないで!」
太一は深呼吸をしてからまた発声を開始する。その顔は真っ赤だ。愛が見守る中、太一は発声を続ける。その中、今度は祐介が体育館に現れた。また太一は声を閉じる。
「やめるな!」
愛の怒声が飛ぶ。俯く太一に祐介がにこりと微笑む。
「太一。お前はロロオをやるんだ。お前のことはみんな応援してるんだぞ?人の何倍も努力してるだろ?」
太一は俯いたまま、うんと呟く。
「学習発表会くらいでって思うかも知れないけど、小さいことから出来なきゃ駄目だろ?」
期待が重い。だが、太一は小さく分かったと呟いた。
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