SCP-1045-JP「お眼鏡にはかなわない」

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《お別れ会》 このTaleは副担任である男性教師目線で描かれており、先生を送るお別れ会へと急ぐ彼の思いが綴られています。 クラスの歌と共に、遺品である赤ペンと花瓶を教卓に乗せ、みんなで先生を送るお別れ会の進行を任せられた副担任でしたが、生徒達への恐怖と、先生への後ろめたさから、準備係と学級委員に全てを押し付けてしまいます。 というのも、先生の気持ちを理解できない生徒達による常軌を逸したいじめを見て見ぬふりをしていた教師たちは、「次の生贄」になるのを恐れ生徒たちを止めることが出来なかったのです。 いつの日か学校へ来なくなったのを見た副担任は、『良かった、とその時は思った』と語ります。 『これでもう、あんないじめを受けることはない。もう、先生のあの、崩れかけの作り笑顔を見ることもないんだ。』と。 彼女の母親によって伝えられた訃報は、教師たちを凍り付かせました。 自責の念に駆られた副担任は、1か月を苦しみながら過ごしました。 しかし、せめて先生を送る時だけは、彼女が笑顔になれるようにしなければと思った彼は決意を胸に█年█組のドアを開けます。 そこにあったのは…… (実際のTaleから引用させていただきます) 『誰もいない教室。 いつも通り並んだ机と椅子。 ぐちゃぐちゃに汚れた紙花の山。 散乱する短く千切られた輪飾り。 黒板に汚く書かれた、 「クソ教師ざまあみろ!!」 の文字。 そして、 割られた花瓶と、 真っ二つに折られた、赤ペン。 僕は。 膝から崩れ落ち、泣き叫んだ。 ペンの断面から、赤黒いインクが血溜まりのように溢れていた。』 《希望でした》 こちらは田中先生の元教え子が書いた手紙の物語です。 青年が引っ越しの準備をしていると懐かしいものが出てきます。 それは「よく出来ました」という青い字と大きな花丸が書かれた原稿用紙。 作文を書くのが苦手だった彼が一度だけもらった努力の証でした。 その時の喜びを忘れず、現在の彼は、創作サイトで下手くそなりに文章を書いているといいます。 急な転校とはいえ一言も声をかけられなかったことを悔いつつ、文を生み出す楽しさを教えてくれたことへの紛れも無い感謝が手紙にしたためられていました。 『お世話になったのは短い間でしたが、その声や顔。評価こそ厳しかったけれど、今なら分かる、僕たちを見る優しい目。そして特徴的な、黒い縁の眼鏡を。全て鮮明に覚えています。 先生は、あの時みたいに、笑えていますか?』 《ハーマン・フラー主催:「女の死」と「奇跡の誕生」》 田中先生があのハーマン・フラーに見世物にされていたら……というTale。 ハーマン・フラーについては皆さんで調べてみてください。 「ハーマン・フラーの不気味サーカス」という要注意団体があります。 まあ、このサーカスのいつものことですが、例によってポスターが出てきます。 田中先生もいつも通り添削をしまくってます(ちなみに添削前のポスターには田中先生の実写の顔が出てくるのですが、どうやらこれはフリー素材のメガネの女性の写真を引き伸ばしたもののようです。正直怖い)。 あれほどの目に遭いながらポスターの文言に「生徒達は悪魔じゃありません」と添削するなど、ここでも痛ましい文言が続きます。 しかし、彼女はポスターに書かれた日付についに絶望してしまいます。 そう、彼女がこれを確認したのは自分が死んだ1週間後の事。 ここでも実際のTaleから引用させていただきます。 『(18)─嘘です。私は自分の部屋で….。 (19)─もしかして、私が死ぬのを皆で見ていたんですか? (20)─誰も助けてくれる訳でもなく、私の死を見て笑っていたんですか? (21)─苦しむ私を皆で。』 【最後に】 如何でしょうか。 今回は私は何も言いません。 ただ、皆さんで、このオブジェクトが一体何を意味し、オブジェクトの持ち主であった田中先生はどのような気持ちで生徒からのいじめに耐えていたのか、彼女が最期にどう思っていたのか、考えてみてください。 次回はSCP-1983「先の無い扉」を紹介します。 開いたのなら、閉じない扉はありません。
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