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一方、移住先の『ニューG地区』は、江東区の海上に在る巨大な人工島で、その名の通り、この『G地区』と、ほとんど変らない状況になっている。
街の景観も家の間取りも何もかもである。
唯一の違いは、居住地帯の下――つまり地下に、巨大なショッピング・
ゾーンがあることだった。
飲食製品を始め、生活雑貨、趣味・嗜好品のほとんどが入手できるのだ。
そのゾーンへは、それぞれの町内ごとに設けられた、約五ヶ所の出入り口から自由に行ける。エレベーターも当然、完備されている。
オマケに、バスやタクシーに似た交通も在るが、全て無料なのだ。
まさに、これからの高齢化時代を考えた理想的な地区で、都内在住の高齢者のために造られた地区なのだった。
さらにその上『ニューR地区』という文化的見地からの新しい地区が、『ニューG地区』の南側に接続される予定だ。
その接続路も地下を利用しており、景観を損ねない配慮がされている。
もっとも、隠居暮らしの佐竹老人としては、出向く可能性は少ないだろうが……。
ほとんどの家財道具一式も、完全コピー復元されて、用意されている。
したがって、これからの普段の生活は何一つ変らないのだ。
なのに……何故……? と、田島は思っていた。
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