28人が本棚に入れています
本棚に追加
田島は、バッグからスーパーホログラフィー装置を取りだした。
この装置は、本部のスーパーコンピューターと直結していて、平成からの全ての国民の画像データーが再現できる上、動画として加工・編集もできるという優れ物だった。
田島は、そのスーパーホログラフィー装置を
佐竹老人の前に置いてから、
「佐竹さん、奥様の生年月日をお願いします」
老人は、少し考えながら答えた。
田島は、タブレットで佐竹昭子のデーターを呼び出すと、その動画情報を
本体に転送した。
その瞬間、佐竹老人の前に身長三十センチほどの昭子の動画が現れた。
「おー、昭子……」
「佐竹さん、奥さんの身長、もっと大きく、等身大くらいでも出来ますが、どうしましょう?」
「いや、こんなんでいいですよ。あいつは、わしと同じくらいだったから……」
「了解です。では……」
田島はキーボードを使って、昭子の動画像に言わせたい文句を入力する。
『あなた、お久し振りです。お元気そうですね』
「あー……昭子……。久し振りで……」
『はいはい。やっと、ニューG地区への移住を決断してくれて、本当に良かったですわ……』
「ん……ん……。昭子……待たせて、すまんかったな……」
佐竹老人は涙を流していた。
『じゃ、あなた、ニューG地区で待ってますね』
スーパーホログラフィーで出現した昭子は、老人に向かって会釈すると、スーッと消えた。
最初のコメントを投稿しよう!