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田島は操作を終了した。
佐竹老人は、田島の方を向くと、
「ありがとう。約束じゃ、ニューG地区へ送ってくれ」
「はい。ですが、その前に、ちょっとした手続きがありまして……」
田島は、タブレットの1ヶ所をタッチしてから、佐竹老人の前に置いた。
その画面には、大きな三重丸が現れた。
「おー、これは?」
「個人識別画面です。その三重丸の真ん中に、佐竹さんの片手を広げた状態で乗せてください」
老人は、言われた通りした。
すると画面が点滅した。
「はい、それで識別完了です。次に出た文章を良くお読みください」
「ん……? あー、承諾書か……」
「お読みいただいた上で、その下にあります『はい』をタッチしてください」
老人は、じっくり黙読んでから『はい』をタッチした。
「はい、それで完了です」
田島は、タブレットを回収すると、
「では、これから、佐竹さんをニューG地区へ転送いたします。目を閉じて、ゆっくり十を数えてから、目を開けてください。もうその時には、新しい住まい……とは言っても、ここと変りませんが……そこに佐竹さんはいらっしゃいます」
「わかった。今日まで苦労かけて、済まなかったね」
「いえ」
「じゃ目を閉じるよ」
「はい。どうぞ、いつまでもお元気で」
田島は右側のポケットに手を入れると、転送端末のストッパーを外し、ボタンを押した。
老人は、スーッと消えた。
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