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20XX年――令和になって二十年目が近くなったこの年……
日本の都市計画は、老齢福祉を重視した政策の下で、大規模な改革が進められていた。
中でも東京都における改革案は、とりあえず老人の居住地帯を、利便性を重視した政策によって進められていった。
その本丸ともいえる東京都庁の第5別館は、港エリヤのS地区にある。
その4階に実働拠点ともいえる『開発部・改革推奨センター』の『推進課』はあった。
ここでは、ほとんどのスタッフが、今日のスケジュールを、タブレットで確認し、午前九時半までに、それぞれの担当地区に向かう。
その1人の田島係長も、必要なデータ等が保存されているタブレットや、業務に必要な機器をカバンに入れて、センターの廊下へ向かっていた。すると――
「よー田島、例のオヤジだろ。今日で何回目だ?」
課長の増田が、ロッカールームから声をかけた。
「十回目です」
「なら、いよいよだな……」
「えー。いよいよです。けど……強制っていうのは、どうも……」
「こんな役目……お前も大変だよな……」
「いえ。僕はこの仕事、キライじゃないですから……。じゃ、行ってきます」
「おー、気をつけてな。スタンバイはしてあるから」
「了解でーす」
田島は廊下に出ると、真っ直ぐエレベーターに向かった。
エレベーターで地下3階まで降りる。
そこは職員専用のパーキングだ。
田島は1台の公用車に乗ると、スーパー・マイカードをハンドルの横の
リーダーに入れた。
数年前から、ほとんどの公用車は全自動となっていた。
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