仕事を見つけた小さな探偵

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その人物は、クリーム色にターコイズブルーのメッシュの入った長い髪を後ろでひとつにまとめた若い青年だった。制帽をきっちりと被っているため、顔はよく見えないが、服装からして郵便局の配達員だろう。 何かうちの事務所に届け物だろうか? それとも………… 郵便局で事件が起きた……………? どちらにしろ話を聞く必要がありそうなのでその配達員を事務所の中へと招いたが、『此処で大丈夫です』と断られた。……だとすると、それほど長くなる用ではないのだろう。恐らくただ配達物を届けに来ただけだろう。 「遅れましたが伺います。こちら、アデル・ド・クルヴィデン様の事務所でお間違いないでしょうか?」 「配達お疲れ様です。はい、アデルは私です。ところで今日はどんな御用でいらっしゃったのですか?」 とても丁寧で礼儀正しい配達員の方だったので思わず自分まで背筋が伸びる。相手がきっちりしていると自分まで緊張してくるのは何故だろうか? というくだらない疑問をもちながら相手の返事を待つ。 「重要な配達物なのでポストに入れず、お声をおかけしました。忙しい中申し訳ありませんでした。……そしてこちらが配達物になります」 そう言って配達員の青年が渡してきた封筒は……………… 今一番わたしが一番欲しかった、トゥマロス宮殿の祝福パーティーの招待状だった………… 一体何故私に届いたのだろうか? だって、このパーティーには身分の高い者しか招待されないはずなのに……大体タイミングが良すぎる。もしかして………… ―――――誰かがソフィーお姉さんと私の会話を盗聴していた……? 「あの、この招待状って何時(いつ)郵便局に届いたか、ということは分かりますか?」 少々探りを入れてみる。郵便局から来た招待状なら分かるはずだ。そして、青年もちゃんとした配達員なら言うまでもない。私でも封筒を見れば分かることなのだから。 「? はい、分かりますけど…………どうしてでしょうか?」 少し訝しげな表情を浮かべる青年。………、ここで理由を話していいのだろうか? 考えたくはないが、もし誰かが私たちの会話を盗聴していたとするならこの青年が犯人の可能性だってある。 恥ずかしい話、ソフィーお姉さんとの会話に集中しすぎて窓の外を見ていなかったから怪しい人物が事務所の近くにいても気づかなかっただろう。 ……完全に私の注意不足だった。
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