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「あのー……結局日付の方はお伝えした方がよろしいのでしょうか?」
配達員の青年が尋ねてくる。勿論知りたいので彼の言葉に『はい、』とだけ返した。
が、やはり彼の正体が気になるのでカマをかけてみることにした。ここで正体を明かせればいいのだが…………
「あの、先程から質問ばかりで申し訳ないのですが……事務所内を覗いていたりする、怪しい人物を見ませんでしたか? 中にいて少し視線を感じたような気がして……」
勿論これは嘘だ。そもそも私は外の様子など気にしていなかったのだから。
ではなぜこのような嘘をついたのか。それは、この事務所がある通りは人通りがほとんどないからだ。
実際に時刻ごとの人通りの調査をしたことがあるが、この時間に通る人は平均でほぼ0人だった。
この質問で誰かが通ったとこの郵便局の配達員が言えば、それは確実に嘘と言っても過言ではない。
さて、彼はどう答えるのやら…………
暫しの静寂。その後に口を開き、青年はこう言った。
「そういえば、さっき……、長めの黒いローブを羽織った長身で長髪の男が走っていったような気がします。顔は……、すみません。ローブのフードを被っていてよく見えなくて……」
少し早口、特徴をちゃんと掴んだ証言。……彼は、嘘をついている可能性が高い。いや、ほぼ確実についているだろう。
だいたい走ってゆく人の特徴なんてここまで細かく掴めないはずだ。
それに、ローブのフードを被っていたのなら後ろ髪が見えないわけなのだから長髪と断言できるのがおかしい。矛盾している。
私は彼をキッと睨みつけ、こう言い放った。
「貴方、嘘をついていますよね? 矛盾した証言が何よりの証拠です。正直に答えてください、盗聴していたのは貴方なんですよね? そして、この招待状は本物なのですか?」
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