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ドアが完全に開き、お客さんの姿が露になった。
いや、正確に言えばお客さんだと思っていた人物、と言った方がいいだろう。
美人でスタイルのいい、一人の女性がそこにいた。
「久しぶり~、アデルっ!」
気づくと店に入って来ていた彼女は呑気にそう言いながら私の元に駆け寄ってきた。
彼女の名前はソフィー・ドゥ・エロワ。生まれてすぐ捨てられた私を拾って育ててくれた人である。
最近知ったことなのだが、あのとき彼女が私を拾ってくれていなければ、私は死んでしまっていたらしい。
命の恩人であり、さらに色々と良くしてくれたので私は彼女を慕い、『ソフィーお姉さん』と呼んでいる。
一緒に暮らしているのか、と大抵の人は思うだろうが今は違う。
実は、二年前からソフィーお姉さんの家を離れて一人暮らしているからだ。
それから一年に一度、ソフィーお姉さんが此処に訪れるようになったのだ。
しかし、ひとつ気になることがあるのだ。
去年ソフィーお姉さんが此処に来たときは、今年の八月の半ばに来ると言っていたのだが……
ちなみに今は四月なので、彼女は四ヶ月も予定より早く来たということになる。
八月の半ばに何か用事でもできたのだろうか……?
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