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エリクが寝かされていたのは、寄宿舎の部屋を思い出すような小ぢんまりとした質素な部屋だった。
魔王の命を狙う勇者を拘束して押し込めた、と言うには随分と待遇が良い。
「そうなんですよ。責任と呪いの板挟みで悶々と悩み倒して、それが爆発すると魔王に突進して返り討ちに合うというのを、この三週間くらい繰り返しているんです」
魔王との話の真偽を確かめる為に、ロジュとレミに意見を求めたところ、盛大に頷いてくれた。
できれば否定して欲しかった。
我が王国の希望である勇者が、そんな情けない呪いを掛けられたなんて。
「魔王の前に立っても『倒したら呪いが解けない』ってのが頭を過って、逆ギレして帰って来るという」
「それを、あの村の人たちは『魔王の日』と呼んでいます」
ロジュに続いてレミがふざけたことを言う。
ここで出てきた「魔王の日」。
さっきロジュが誤魔化した妙な言い回しのやつだ。
「おい、そんな風に言われてるなんてディオン様に知られたら怒られるから言うなよ」
ロジュは慌ててレミの口を塞いだ。
なるほど。
そういう訳で、さっきは不自然に誤魔化したのだな。
そりゃ怒るわ。
勇者の威厳なんてあったものではない。
「でも、エリクが行ったり来たりしているお陰で、森の魔物も減って、と言うかいなくなって、村の人たちには喜ばれてますよ」
俺の様子など気にしないレミが得意気に言う。
確かに、森に魔物は出なかった。
そんな間抜けな理由だったとは。
村が予想していたよりものんびりしていたように見えたのは、近くの魔物が減ったからか。
そんな副作用、どうでもいいわ。
いや、村の住人にはどうでもよくないか。
「魔王の日のエリクは荒れてるから、扱いが大変なんですよ」
あの時のエリクの様子が荒かったのは、そういう訳だったのか。
いつもワンコみたいな奴だったから、ああいう上から目線な態度は珍しい。
と言うか、初めて見たな。
セリフも何やら妙だったし、精神的に参っているのだろう。
そして、愚痴を零したロジュがさらっと「魔王の日」を使っているのを、俺は聞き逃さなかった。
お前もしっかり使っているじゃないか。

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