ドラムバトル

1/7
前へ
/36ページ
次へ

ドラムバトル

 デスパレイトのドラマーとして活動を続けている中、俺にバンド活動以外での仕事の話が舞い込んできた。  内容は、コンピューターによるドラム演奏とのドラムバトルの話だった。  しかも、人気テレビ番組の中で、生放送となる。  審査は、テレビの視聴者から応募を募り、抽選で選ばれた人達百人が行い、得票数が多かった方が勝者となる企画だ。  俺としては、バンドの方に集中したかったので、断ろうと思ったが、ここはメンバーに相談をしてみることにした。 「恵人。ここは受けて立てよ。お前のパワーとスピードで、コンピューターサウンドを粉砕してやれよ」  リーダーからは、意外な答えが返ってきた。 他のメンバーからも、「やれよ!マシーンなんて叩き潰せ!」と、勢いに任せた回答が続いた。 「断れば、逃げたと見なされる。やるしかないだろう!」 「お前なら、大丈夫だよ!」  メンバーの皆の回答の到達点だったような気がする。 「恵人なら行けるよ!プロになってからも練習を欠かしたことはないじゃないか」  マネージャーも乗り気だったので、俺は受けることにした。  何故なら、プログラムによる機械が作りあげる音楽を、快くは考えていなかったからだ。  人間が作りあげる音にこそ、人の心が宿る。心の無い音に、人の心を響かせることなんて出来やしない。機械が作り上げる、冷たく光る音に、人が感動するなんてあり得ない。  そんな熱い想いを抱き、俺はコンピューターとのドラムバトルに挑む決断をしたのだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加