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ドラムバトル
デスパレイトのドラマーとして活動を続けている中、俺にバンド活動以外での仕事の話が舞い込んできた。
内容は、コンピューターによるドラム演奏とのドラムバトルの話だった。
しかも、人気テレビ番組の中で、生放送となる。
審査は、テレビの視聴者から応募を募り、抽選で選ばれた人達百人が行い、得票数が多かった方が勝者となる企画だ。
俺としては、バンドの方に集中したかったので、断ろうと思ったが、ここはメンバーに相談をしてみることにした。
「恵人。ここは受けて立てよ。お前のパワーとスピードで、コンピューターサウンドを粉砕してやれよ」
リーダーからは、意外な答えが返ってきた。
他のメンバーからも、「やれよ!マシーンなんて叩き潰せ!」と、勢いに任せた回答が続いた。
「断れば、逃げたと見なされる。やるしかないだろう!」
「お前なら、大丈夫だよ!」
メンバーの皆の回答の到達点だったような気がする。
「恵人なら行けるよ!プロになってからも練習を欠かしたことはないじゃないか」
マネージャーも乗り気だったので、俺は受けることにした。
何故なら、プログラムによる機械が作りあげる音楽を、快くは考えていなかったからだ。
人間が作りあげる音にこそ、人の心が宿る。心の無い音に、人の心を響かせることなんて出来やしない。機械が作り上げる、冷たく光る音に、人が感動するなんてあり得ない。
そんな熱い想いを抱き、俺はコンピューターとのドラムバトルに挑む決断をしたのだ。
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