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俺の場合、仕事が深夜になるから、二人との連絡のとり合いに何時もずれが生じてしまう。二人もその点については、理解をしてくれている。
俺は仕事を終え、数時間前に来た留依からのメールを開く。
早速、音源のファイルと歌詞が添付されていた。留依の仕事の速さに驚いたが、予め準備をしていた可能性も考えられる。
先ずは聞いてみることだ。
クリックによるカウントが入り、疾走感のある楽曲が鳴りだす。打ち込みで処理されたのは、ドラムパターンだけだった。ギター、ベースそして、ボーカルは留依によるものだ。
ギターはコードを弾いているだけの感じのものだ。これは、丈二がしっかりとアレンジをしてくるだろう。ドラムは基本的なリズムパターンを打ち込んだだけの物になっている。ベースラインはしっかりとした物が入っているので、これを軸に考えて行けば大丈夫だろう。
後は、曲のイメージを掴み、楽曲の世界観をドラムの音でしっかりと表現をすることだ。細かい部分の調整は練習の時に行えば良い。
改めて歌詞に目を通して見る。
ユートピア
作詞・作曲 瞳 留依
憧れた民は Oh-
憧れた土地は Oh-
いつかきっと会えると 信じた時代
いつかきっと行けると 感じた瞬間
瓦礫の山の中に埋もれ
消えた儚さの温もりを
憧れた時は Oh-
憧れた夢は Oh-
無駄に過ごした時間 笑いながら捨てろ
遊びで潰した人生 今から拾い歩け
嘆き悲しみ果てに死ね
もどかしさの憂欝を
マイクロミリ単位の 神経の損傷
ミリオンカラーの 思考回路
憧れた音は Oh-
憧れた色は Oh-
バカのままで死ねる 幸せな人生
飛び込んでみればいい 病の巣窟
成れの果ての夢物語
腐りかけた時の甘さ
マイクロミリ単位の 世界の決壊
ミリオンカラーの 人生模様
ユートピアと言う曲名なのか。歌詞の内容が難しくて、俺には良く分からない世界だが、明るい未来など存在せず、どうにもならない、荒んだ救いようのない世界を嘆いているのだろうか。曲調としては、疾走感の溢れる格好いい曲だ。
留依が組んでいた前のバンドとは違う感じの楽曲だ。
ここで、余計な事を考える必要は無い。俺としては、次の練習までに、この曲のドラムフレーズをしっかりと組み立てておくことだ。
この楽曲の格好良い世界観を台無しにしてしまう事が無いように。
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